気候変動への対応(TCFD提言に沿った情報開示)

方針・戦略

地球温暖化にともなう気候変動は、異常気象や自然災害を引き起こす可能性があり、国際社会が一体となって取り組むべき課題です。2015年に開催された第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)ではパリ協定が採択され、世界共通の長期目標として「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求する」ことが掲げられました。
また、気候変動は、原油価格や原材料価格の高騰など、雪国まいたけグループの事業に影響を及ぼす可能性も少なくありません。気候変動への対応は、世界全体と、雪国まいたけグループの持続可能性にとって重要な課題であると認識しています。
そのため、雪国まいたけグループは、「2050年度に温室効果ガス排出量ネット・ゼロ」「2030年度までに2020年度比、排出量原単位(生産量ベース)で約35%削減」を目標に掲げたほか、マテリアリティに「気候変動への対応」を定め、調達から生産、物流、流通に至るバリューチェーン全体にわたる「気候変動の緩和(温室効果ガス削減)」に取り組んでいます。エネルギー変換効率の高い代替エネルギーの活用や、きのこ製品の包装形態や包装資材変更によるプラスチック使用量の低減、地元からの原材料調達による物流CO2の削減など、環境負荷低減のための取り組みを進めています。また、「気候変動への適応」に向け、マテリアリティに「持続可能な原材料等調達と水資源の活用」を定め、森林整備活動「雪国まいたけの森づくり」などの取り組みを進めていきます。
さらに、2021年11月には、気候変動によってもたらされる企業の財務的影響について適切な情報開示を求める「TCFD (気候関連財務情報開示タスクフォース)提言」への賛同を表明しました。気候変動によるリスク・機会の洗い出しや重要度の評価、1.5℃シナリオや4℃シナリオに基づいた財務インパクトの試算などを行っています。TCFD提言への賛同を機に、より一層脱炭素社会の実現に向けた取り組みを加速させるとともに、TCFD提言に沿った情報開示を強化していきます。

体制・ガバナンス・リスク管理

詳細はサステナビリティマネジメント体制をご覧ください。

指標・目標

気候変動の緩和に向け、雪国まいたけグループにおけるスコープ1・2・3の温室効果ガス排出量を測定しています。2020年度を基準年として、2030年度と2050年度をターゲットとした削減目標を設定しています。2030年度に向けては、排出量原単位(生産量ベース)として基準年比35%の削減を目指します。さらに、2050年度には「排出量ネットゼロ」を目標に、調達から生産、物流、流通に至るバリューチェーン全体にわたって温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいきます。

  範囲 2020年度
(基準年)
2021年度 2022年度 目標
温室効果ガス排出量
(スコープ1+2+3)
連結 174,727 t-CO2 170,816 t-CO2 163,035 t-CO2 ※1
 スコープ1 連結 30,184 t-CO2 30,768 t-CO2 28,277 t-CO2 -
 スコープ2 連結 53,620 t-CO2 54,755 t-CO2 48,489 t-CO2 -
 スコープ3 連結 90,923 t-CO2 85,293 t-CO2 86,270 t-CO2 -
排出量原単位
(生産量ベース)
連結 2.96 t-CO2/t 2.88 t-CO2/t 2.77 t-CO2/t ※2
総エネルギー使用量
(原油換算)
連結 134,046,029 kl 121,301,789 kl 121,335,842 kl -
  • ※1 2030年度:排出量原単位(生産量ベース)として基準年比35%の削減
    2050年度:温室効果ガス排出量ネット・ゼロ
  • ※2 2025年度:2.71t-CO2/t
    2030年度:1.92 t-CO2/t

スコープ別温室効果ガス排出量(2023年3月期)

スコープ別温室効果ガス排出量(2023年3月期)
スコープ/カテゴリ 排出量
(t-CO2
割合(%)
スコープ3 スコープ1~3
サプライチェーン排出量 163,035   100
スコープ1 28,277   17.3
スコープ2 48,489   29.7
カテゴリ1 購入した製品・サービス 42,639 49.4 26.2
カテゴリ2 資本財 9,123 10.6 5.6
カテゴリ3 Scope1、2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 11,279 13.1 6.9
カテゴリ4 燃料、配送(上流) 5,968 6.9 3.7
カテゴリ5 事業から出る廃棄物 2,633 3.1 1.6
カテゴリ6 出張 309 0.4 0.2
カテゴリ7 雇用者の通勤 2,353 2.7 1.4
カテゴリ8 リース資産(上流) 0 0 0.0
カテゴリ9 燃料、配送(下流) 1,115 1.3 0.7
カテゴリ10 販売した製品の加工 271 0.3 0.2
カテゴリ11 販売した製品の使用 6,691 7.8 4.1
カテゴリ12 販売した製品の廃棄 3,888 4.5 2.4
カテゴリ13 リース資産(下流) 0 0 0.0
カテゴリ14 フランチャイズ 0 0 0.0
カテゴリ15 投資 0 0 0.0
スコープ3 86,270 100 52.9
  • ※ 対象範囲は雪国まいたけ、三蔵農林、瑞穂農林
  • ※ 算定係数はIDEA並びに環境省データベースを使用。データベースが存在しないものはシナリオを作成し算定。
  • ※ (株)雪国まいたけは2023年4月1日付で子会社である(株)三蔵農林を吸収合併いたしました。

温室効果ガス排出削減目標

温室効果ガス排出削減目標
  • ※ (株)雪国まいたけは2023年4月1日付で子会社である(株)三蔵農林を吸収合併しました。
  • ※ 現在、温室効果ガス算出削減目標に海外子会社の排出量は含んでいません。

取り組み

気候変動によるリスク・機会の重要度評価

地球温暖化に伴う気候変動は、集中豪雨や台風の増加、異常気象による洪水・土砂災害や酷暑、異常な暖冬や冷夏など、植生物の環境にさまざまな被害を引き起こす可能性があります。雪国まいたけグループにおいても、世界規模での気候変動により、原油価格の高騰による原材料価格の上昇や、消費者の消費志向の変化など、事業や財務に影響を及ぼす可能性があります。
こうした考えのもと、当社では2030年を対象年としたシナリオ分析を行いました。シナリオ分析にあたっては、脱炭素社会への移行が進行する1.5℃シナリオと、現状を上回る温暖化対策が取られず温暖化が進行する4℃シナリオの2つを検討しました。検討にあたっては、IEAが発行する「World Energy Outlook」の各シナリオ、IPCCが採用するSSP(共有社会経済経路)シナリオ、およびRCP(代表的濃度経路)シナリオ、日本政府等が発行した各種の将来予測や計画を参照しました。
現時点で想定されるリスク・機会については以下のとおりです。

想定されるリスク・機会
分類 事象 想定される事業への影響 発現時期 重要度 対応策
移行リスク 政策 炭素税の導入 生産・物流などの事業活動に伴うCO2排出量に対する炭素税負担の増加 短期
中長期
  • 生産プロセスの効率化による生産コスト削減
  • 再生可能エネルギー導入による将来的な炭素税負担の回避
  • 生産設備へのLNGの導入、バイオマスボイラーの導入による将来的な炭素税負担の軽減
  • 配送方法の見直しによる輸送効率の向上
  • 栽培に使用した後の菌床をボイラー燃料としてリユース
プラスチック製包装資材の調達コスト増加 短期
中長期
  • プラスチック包装資材の減量化による調達コスト削減
物理リスク 急性 台風や豪雨、猛暑等の異常気象の激甚化、多発 自然災害、異常気象によって、きのこ栽培の原材料であるオガ粉、ふすま等の副材料の調達が不安定化、価格が高騰 短期
中長期
  • 培地の再利用比率の向上によるオガ粉の使用量削減
  • 「雪国まいたけの森づくり」活動を通じた活力ある森林整備と持続可能なオガ粉の調達
  • 気候変動の影響を受けにくい原材料を使用した品種の開発
慢性 気温の上昇、降水・気象パターンの流動化 気温上昇によってきのこの生育環境変化し、温度・湿度管理のための空調費用などが増加 短期
  • 高効率、省エネルギーな空調設備への切り替え
  • 気温変化の影響を受けにくい栽培技術や品種の開発
機会
製品とサービス 低炭素・脱炭素に貢献し得る商品・サービスの開発・拡大 動物性食品から植物性食品への代替が進み、きのこを用いた新たな商材の創出機会が増加 短期
中長期
  • きのこの特性を活かした代替プロテインを新たな製品として生み出すための研究開発
消費者嗜好の変化 気候変動による感染症リスクへの懸念から、免疫力の向上に役立つきのこのニーズが増加 短期
  • 消費者へのきのこの効能の訴求により、年間を通してきのこを食する習慣を普及
レジリエンス 物理リスクの顕在化 露地栽培よりも気象変化に左右されにくい施設栽培の作物であるきのこの販売機会が拡大 短期
  • 不安定な気候環境でも安定的に商品を生産・供給
  • ※ 菌床:木材を粉砕してつくられるオガ粉に、水やふすま(小麦粒の外皮や胚芽)などの栄養剤を混ぜ合わせたきのこ栽培の土台。

財務インパクトの試算

抽出したリスク・機会のうち、発生可能性および重要度の高い項目については、財務インパクトを試算しました。

1.5℃シナリオ

1.5℃シナリオにおいては、気温上昇に歯止めをかけるため、さまざまな規制が導入・強化される社会の移行リスクシナリオに基づいてリスク・機会を検討しました。

重要度の高いリスク・機会と財務インパクト

社会の移行

政策・技術
政策・技術
  • 低炭素化に向け、炭素税・排出権取引を導入
  • 省エネ、再エネ普及をはじめとした低炭素化促進政策を実施、省エネ、再エネ分野の技術革新が進む
経済・社会
経済・社会
  • 環境意識が高まり、環境配慮型の商品・サービスの需要が増加
  • 企業の環境への取り組みが企業投資の検討軸となる

気候の変化

慢性
慢性
  • 気温上昇は2100年時点で1.5℃に留まる
急性
急性
  • 地球温暖化の影響は限定的
  • 仕入
  • 生産
  • 販売

    消費

リスク

政策・物理リスク

調達コスト増加

原材料、包装資材(プラスチック)などの調達コスト増加
(仕入単価上昇、物流コスト増加など)
(財務影響:▲6千万円)

政策リスク

炭素税の賦課

炭素税の賦課によるコスト増
(財務影響:▲14億円)

機会

資源効率・エネルギー源

脱炭素取組の推進

  • 省エネ設備の導入など脱炭素の取り組みによる炭素税賦課の回避
    (財務影響:+7億円)
  • 再エネ導入による事業コストの削減
    (財務影響:+7千万円)

製品・サービス

新たな商材の創出

環境配慮型の商品の需要増加に即した、きのこを用いた新たな商材の創出

4℃シナリオ

4℃シナリオにおいては、地球温暖化が進行し、異常気象の発生、自然災害の激甚化等が想定される物理的リスクシナリオに基づいてリスク・機会を検討しました。

重要度の高いリスク・機会と財務インパクト

社会の移行

政策・技術
政策・技術
  • 炭素税・排出権取引は未導入
  • 大量消費や化石燃料依存を前提とした技術革新が進む
経済・社会
経済・社会
  • 価格や品質を重視した消費活動が継続
  • 環境配慮型の商品・サービスのニーズは限定的

気候の変化

慢性
慢性
  • 気温が上昇(2030年時点で現在より0.4~0.5℃上昇)
  • 気温上昇による感染症リスクの高まりが懸念される
  • 温暖化の影響により海面が緩やかに上昇
急性
急性
  • 極端な高温や大雨など異常気象の発生頻度増加
  • 洪水などの災害の激甚化が懸念される
  • 仕入
  • 生産
  • 販売

    消費

リスク

急性リスク

原材料の調達困難

原材料の不作による、調達の不安定化・調達価格の高騰
(財務影響:▲2億円)

慢性リスク

生育環境の変化

きのこの品質保持のためのコスト(空調コストなど)増加
(財務影響:▲1千万円)

機会

レジリエンス

販売機会の拡大

露地栽培よりも気候変化に左右されにくい施設栽培のきのこの販売機会の拡大

目標達成へのロードマップ

2030年度の削減目標の達成に向け、短期・中期・長期のロードマップを策定しています。各施策を実施することで、スコープ1・2で約45,800t-CO2、スコープ3で約16,700 t-CO2の削減を目指します。また、社会におけるさまざまな技術の進歩や革新などにより、新たな削減施策も引き続き検討・実施していきます。

目標達成へのロードマップ

気候変動の「緩和」に向けた取り組み

調達での取り組み

副産物の培地原料利用

温室効果ガス排出量の削減と資源の有効利用のため、きのこ栽培の培地原料に木材の建築用製材過程で発生するオガ粉や、小麦粉生産の際に発生するフスマといった副産物を利用しています。副産物を使用することで18,243t-CO2分の排出削減に貢献しています。

  • ※ 基準年(2020年度)ベースで算定
  • ※ ある製品をつくるプロセスで生まれる副産物を「リマインダーフロー」といい、温室効果ガスの算定に使用するIDEA(原単位データベース)においては算定の対象外となるため、温室効果ガスの排出削減につながります。

生産での取り組み

LED照明、地下水利用による省エネルギー化

きのこ栽培センターでは、消費電力の少ないLED照明の使用や、栽培室内の温湿度のコントロールに雪国の豊富な地下水を利活用することで、栽培時の省エネルギー化に努めています。

バイオマスエネルギーの活用

栽培に使用した後のオガ粉をバイオマスボイラーの燃料として使用しています。
再生可能エネルギーとして有効活用することで、化石燃料の使用量を大幅に削減しています。

LNG(液化天然ガス)への転換

栽培センターで使用する燃料を、温室効果ガス排出量の少ないLNG(液化天然ガス)へ転換する取り組みを進めています。2021年1月に五泉バイオセンターに設置したLNGサテライト設備及びガスボイラーに続き、2022年10月には第3バイオセンターへの導入を実施しました。これにより、第3バイオセンターでは生産量あたり11.0%(2023/3期、対前年比)の排出量を削減しました。

物流での取り組み

鉄道輸送へのモーダルシフト

2017年からクールコンテナを利用した鉄道輸送を実施しています。これによりトラックによる輸送の場合と比べ、約8割のCO2排出削減に貢献しています。

包括管理による配送トラック便数削減

2021年度から販売物流部を立ち上げ、生産・販売・在庫から物流までの包括的な管理・運営を行うことで、トラックの積載率を向上し、車輌台数の最適化を進めています。

オフィスでの取り組み

本社ビルのエネルギー使用効率改善

新潟県南魚沼市の雪国まいたけ本社ビルは、2020年度に照明のLED化や施設の改修による冷暖房効率の改善を実施しました。これにより、2021年度の本社ビルにおける電力使用量は、2019年度比で112,994kwhの削減となりました。
今後は、グループ会社においてもエネルギー使用効率の改善を検討していきます。

クールビズ&ウォームビズの実施

雪国まいたけグループは2007年から、グループ全体でクールビズ&ウォームビズを実施しています。通年ノーネクタイを可とし、各個人が気温に応じた服装を選択することで、極端な空調温度設定を防ぎ、オフィスの消費電力の削減に取り組んでいます。

気候変動の「適応」に向けた取り組み

雪国まいたけグループでは、気候変動の影響の低減に向けて、以下の取り組みを進めています。

雪国まいたけの森づくり活動

詳細は地域社会との共生をご覧ください。

CSR調達の推進

詳細はサプライチェーンマネジメントをご覧ください。

水ストレスの評価、水資源のリサイクル

詳細は持続可能な水資源の活用をご覧ください。